中国習近平国家主席とザッカーバーグ米議会公聴会の温度差

ビットコイン相場が40%近くの上昇で急反発

26日のビットコイン(対ドル)相場は24時間で39%近くも高騰し、約1ヶ月ぶりに1万ドルの大台を回復して市場を賑わせました。きっかけは中国の習近平国家主席によるブロックチェーン技術の開発を後押しする発言だったと見られていますが、同日、中国の第13回全国人民代表大会の常務委員会で『暗号法』が可決された模様で、チャイナマネーの流入に期待した一部投機筋による買い攻勢が入ったものと考察しています。

中国のブロックチェーンで世界をリードする姿勢は兼ねてより一貫しており、習近平の発言は新しい材料ではありませんでした。中国政府の後押しと人材育成により2016年時点で中国はブロックチェーンに関連したスタートアップ企業の数で既に米国を上回っている状況です。今回の発言が価格の急反発に寄与したのは、発言の絶妙なタイミングにあったのではないかと見受けています。

米国、金融リーダーで在り続けられるか

この発言の3日前の23日、世界を牽引する巨大IT企業のフェイスブックを率いるマーク・ザッカーバーグCEOは、米議会下院金融サービス委員会による公聴会に出席しました。50名以上の議員に対したった1人で臨んだ公聴会の冒頭陳述で、ザッカーバーグ氏は次のような点を共有しました。

Libraの構想は、現在メッセージが簡便に且つ安全に送信できるように送金システムも確立し人々に利便性をもたらすこと。金融安定化やテロリスト対策など課題は山積だが、我々がイノベーションをしないことのリスクも共有したい。世界は今この瞬間にも発展を続けている。中国ではLibraと同様のデジタル通貨(2019/9/6にあった中国人民銀行(中銀)の高官の発言)を数ヶ月後にはローンチしようとしている。Libraが成功するかどうかは分からない。しかし、責任を持って新しいことにチャレンジすることが大事であり、チャレンジ精神がこれまで米国の発展に寄与してきた。イノベーションを続けなければ、米国が今後も金融のグローバルリーダーであり続ける確証はない。(公聴会での発言を元にCoinCollege√の解釈・仮訳)

しかし対する議員は”フェイスブック=Libra”として、同プロジェクトに嫌悪感を示しました。

フェイスブックは、①個人情報流出問題。これに絡み50億ドル(約5400億円)もの巨額制裁金が実際に課せられたこと、②偽アカウントとフェイクニュース問題。2016年の米大統領選に係り、ロシアが組織的にFBに偽アカウントを作成しフェイクニュースを垂れ流す不正な選挙介入を招いたこと。2020年の米大統領選を前に、ロシアがインスタグラムを経由して類似手法で介入しようとしていること。政治広告のファクトチェック不実施、③差別的ターゲティング広告問題、④メッセンジャーを経由した児童性的虐待写真の流出問題、⑤ユーザーデータの利用を防止するための暗号化の推進と、暗号化した場合の政府機関による犯罪摘発の相反する問題など、多くの課題を抱えていることが改めて指摘されました。

あまりに巨大化したプラットフォームは、まるで一つの政権のようになりつつあり、解体を検討すべきだとの声も上がりました。一部共和党保守派の議員からは、イノベーションの芽を摘もうとしていることにむしろ危機感を覚えるとプロジェクトを擁護する声もありましたが、大勢は、フェイスブック自身の問題も解決できないままに、マネーロンダリングや金融の不安定化を招きかねないLibraプロジェクトを主導していること、低所得者の痛みを経験していないザッカーバーグ氏が、銀行口座を持てない人たちのために”低コスト送金”プロジェクトを推進するのは、将来的にユーザーの送金情報から収入を得る営利的企みがあるのではないかとして批判が噴出しました。

1人5分の持ち時間の中で、ザッカーバーグ氏に反論の隙も与えず、Yes or Noの二択を迫る場面も多くあり、今回の公聴会を受けて、各国の報道機関は、規制当局との調整は困難を極めそうだとの印象を伝えました。さらにザッカーバーグ氏が「米当局の承認が得られるまではすべての地域で始めない」と改めて明言したことや、承認が得られないまま、独立機関たるLibra協会がプロジェクトのローンチに踏み切ろうとするならば、「フェイスブックはLibra協会を脱退するだろう」など、当局に配慮した発言が取り上げられました。

革新にオープンである米国が、アメリカン・ドリームの象徴ともされる大手IT企業を社会の諸悪の根源であるかのように批判し、さらに中央集権型のLibraに対して非常に強い懸念を示したことで、仮想通貨市場に先行き不透明感が広まりました。

その最中に、今回の習近平国家主席のブロックチェーン推進発言が報じられ、フィンテック分野で底堅く発展を続ける中国が、米国に代わって仮想通貨市場を牽引し、再びチャイナマネーの流入が増えるのではないかとの期待感が一部投機筋の買いを引き寄せたのではないかと推察しています。

チャイナマネーの流入経路

しかし、中国当局は2017年9月にICOの禁止と仮想通貨交換所の閉鎖を強行しています。さらに、2018年に米中貿易摩擦が本格化したことで、資本逃避目的の利用を防ぐため、静観していた仮想通貨OTC取引の監視も強化した経緯があります。現在も中国に仮想通貨交換所はなく、世界のビットコイン出来高の9割近くを占めていた中国市場は1%未満へと縮小しています。では、中国国家によるデジタル通貨がまだ発行されていない今、チャイナマネーはどこから仮想通貨市場に流入し得るのでしょうか。

出典:coinhills.com

仮想通貨出来高で世界5位につけている米ドルにペッグされたステーブルコインとして有名なUSDT取引の内訳を見ると、その約77%(執筆時点の数値)がQC(QCash)という国内では取り扱いもなくあまり馴染みのない通貨によって買われていることがわかります。QCは香港に拠点を置くZB取引所と豪州拠点のBW取引所で取り扱われていますが、OTC取引でCNYを受け入れているため、coinmarketcapなどで出来高データを確認することはできません。このQCを経由して、つまりCNY→QC→USDT→BTCでチャイナマネーが流入していると推測されているのです。

今回の高騰劇および暗号法の可決で、中国からの資金流入含めた、中国の今後の動向には目が離せません。

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