CBDCの試験運用へ
韓国で中央銀行デジタル通貨(CBDC)の実用化に向けた大規模な試験運用が2024年12月にも開始される見込みだ。韓国銀行(BOK)が主導し、6つの主要商業銀行と協力して銀行預金を裏付けとするデポジットトークンを発行する計画であり、このデポジットトークンを使用して10万人の参加者がスーパーやコンビニでの支払いを行うことができる。
CBDCとは何か?
CBDCは、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨であり、従来の紙幣や硬貨に代わるものである。ビットコインやイーサリアムのような暗号資産、または民間企業が発行するステーブルコインとは異なり、CBDCは国家の信用に基づいて発行され、現金と同様の法的な地位を持つ。
韓国銀行が進めるこのプロジェクトは、10万人規模の消費者を対象とした大規模な試験運用として国際的な注目を集めている。
試験運用の仕組みと背景
今回の試験運用では、韓国銀行がホールセール型のCBDC(wCBDC)を商業銀行に発行し、各商業銀行がそれをデポジットトークンに変換して一般消費者に流通させる二段階プロセスが採用される。
現在、商業銀行は取引や決済に中央銀行の口座で保有するリザーブ預金を使用しているが、今回の試験では、CBDCを使用した小売決済プロセスの改善が検証される見込みだ。
参加するNH農協銀行(NH NongHyup Bank)は、傘下のハナロマートを含む小売業者との連携を計画しており、今後さらにリテール店舗の参加が見込まれている。また、将来的には福祉、文化、教育などの分野でのサービス支払いにも CBDCの活用が期待されている。
CBDCの国際的な動向
韓国国内でのCBDC試験運用に加え、韓国銀行は国際的なCBDCプロジェクトにも積極的に参加している。例えば、日本の3メガバンクも参画している国際決済銀行(BIS)主導の「Project Agorá」には、韓国の主要銀行であるKB国民銀行、シンハン銀行、ハナ銀行、ウリ銀行、NH農協銀行、IBK企業銀行が参画。
このプロジェクトでは、商業銀行預金と中央銀行預金のCBDCとの相互運用性を検証することが目指されている。
日本でも、CBDC導入の是非について議論が続いているが、2020年10月に決定した「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」に基づいて、実証実験が進行中だ。2024年4月には、日本銀行決済機構局によるパイロット実験の進捗報告が公表され、民間が進めるステーブルコインや○○ペイといった電子決済サービスとの共存も重要な検討テーマの1つとなっている。
CBDCの実用化はまだ不透明
韓国の試験運用は、CBDCの実用化に向けた重要なステップだが、 CBDCが日常生活にどの程度浸透するかはまだ不透明だ。また、国際送金におけるCBDCの実用化にも多くの課題が残っている。特に米国は、SWIFTを活用して経済制裁を強化してきた歴史があり、CBDCが国際決済に与える影響は引き続き今後の注目点だ。
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