今朝のデイリーレポートで、Vanna(バンナ)や、Volga(ボルガ)といった少し難解な用語が出てきましたので、補足説明を行いたいと思います!
ちょっと難しく感じるかもしれませんが、実はとても簡単ですので、イメージだけ覚えて頂けると幸いです。クォンツを目指している訳ではありませんので、細かく理解する必要性はありませんよ!!
まず、最初に今回のデイリーレポートで用いた表現を確認しましょう!
Vanna(バンナ)とは「IV(インプライドボラ)の変化に伴うデルタの変化率」です。
MM(マーケットメイカー)のポジションは恐らくネガティブVannaですので、IVが上昇すると、デルタがショートブレし、結果、BTC現物や先物をロスカットで買わざるを得なくなります。
Volga(ボルガ)とは、「IV(インプライドボラ)の変化に伴うベガの変化率」です。
MM(マーケットメイカー)のポジションは恐らくネガティブVolgaですので、IVが上昇すると、ベガがショートブレし、結果、オプションをロスカットで購入せざるを得なくなります。
何故、MMはこのようなポジションになってしまうのか?
現在の仮想通貨オプション市場は、個人投資家がオプションを買い、マーケットメイカー(MM)がオプションを売る構図です。
個人投資家は極力オプション料を支払いたくない(節約したい)為、比較的オプション料が安いローデルタオプション(実勢相場から離れたストライクのオプション)を購入する傾向にあります。
私も幾つか保有しておりますが、例えば、12月27日行使期日の20000ドルCALLや、25000ドルCALL、30000ドルCALLなど、いかにもインザマネーになりそうもないオプションを宝くじ感覚で購入することが良くあります。12月27日行使期日の52000ドルCALLに1500BTCもの建玉が集まっているのが良い例です。
こうしたオプションの引き受け手(オプションの売り手)となるのは大抵マーメットメイカーです。
到達確率がほぼゼロ%のオプション(デルタゼロのオプション)を自らのOfferレートでヒットして貰えるので、売れば売るだけ儲かります。まさにマーケットメイク冥利につきる状態です。到達確率がゼロ%のオプションなので、ポジション(グリークス)への影響もありません(※GammaやVega、Deltaなどパラメータに影響が無いという意味です)。従って、MMはカバーすることも無く、いつしかそのポジションを持っていることさえ忘れてしまいます。
しかし、先日(10/25〜10/26)のように、ビットコイン価格が暴騰し、且つIV(インプライドボラ)も高騰すると、到達確率がゼロだったはずのオプションが突如「到達確率5%」くらいまで跳ね上がります。
オプション・グリークスはこれを見逃しません。昨日まで「到達確率ゼロ%なので無視して良いです」と教えてくれていたグリークスが、突然「あなたは到達確率5%のCALLを大量に保有しています。危険ですので今すぐカバーしないさい!」と警鐘を鳴らすわけです。
ボラティリティが上昇したことで、突如出てくるデルタショートの度合いを表すのがVanna(バンナ)です。つまり、ボラティリティが1%上がるごとに、デルタがどれだけブレるかを教えてくれます。
一方、ボラティリティが上昇したことで、突如出てくるベガショートの度合いを表すのがVolga(ボルガ)です。つまり、ボラティリティが1%上がるごとに、ベガがどれだけブレるかを教えてくれます。
冒頭部分に振り返ると、マーケットメイカーは、「ネガティブVanna」と「ネガティブVolga」を保有しています。
従って、IVが上昇すると、デルタがショートブレし、BTC現物や先物をロスカットで買わざるを得なくなります。つまり、直物や先物相場の動きを助長させる弊害をもたらします。
また、IVが上昇すると、ベガもショートブレし、オプションをロスカットで購入せざるを得なくなります。いつも売り手側に立ってくれるはずのMMがオプションの買い手側に回らざるを得なくなることから、オプション市場にガンマ(相場を膠着させるグリークス)を提供する人が居なくなります。これも相場の乱高下をもたらします。
少し、難しい話に見えますが、実はとても簡単ですので、是非イメージだけでも覚えて下さいね!
私はインターバンクのドル円オプションディーラー時代、VannaとVolgaで大やられしたことがあります。上記で出てきたMMと同じように、前日まで視野にすら入っていなかった大量のローデルタのドルプット・円コールの売り持ちが突如射程圏内どころかインザマネーになっていた訳です。それが2010年5月のゴールデンウィーク明けに東京市場を襲ったギリシャショックです・・・
この話については、また別の機会にご説明いたします!