2019年11月26日以降、Tainoko@仮想通貨さんや、仮想NISHIさん、コロイさんによって、Deribitのスマイルカーブ配信がスタートしました!世界で初めての試みだと思いますので、とても素晴らしいことだと感じております。どうも有難うございます😆
この記事では、スマイルカーブの基本的な事項について解説したいと思います。スマイルカーブを理解することで、トレードを行う際の視界がぐっと広がりますので、是非この機会に学んでおきましょう!オプションディーラーの朝はスマイルカーブ作りから始まると言っても過言ではないですよ☀️
尚、スマイルカーブを用いた具体的なトレード戦略につきましては、この記事では紹介しません。オプション戦略や組み合わせスキーム全般はnoteを通じて定期的に配信していく予定ですので、もし宜しければフォロー頂けると嬉しいです😊 1月から配信をスタートする予定です!!
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スマイルカーブとは?
スマイルカーブとは、各行使価格(例えばBTCUSDの1,000ドルから10,000ドルまで)のインプライドボラティリティ(=市場で取引されているオプション価格をボラティリティに逆算したもの)を左から順番に並べて繋ぎ合せたものとなります。
下記deribitの画面で確認すると、黄色で囲っている部分(真ん中)が行使価格。青色で囲っている部分(左側)がCALLオプションのオプション価格(上段)とインプライドボラティリティ(下段)、赤色で囲っている部分(右側)がPUTオプションのオプション価格(上段)とインプライドボラティリティ(下段)となります。4000ドルなら77.54%、5000ドルなら72.54%、6000ドルなら69.54%、7000ドルなら69.27%・・・・といった具体に繋ぎ合せていくと、スマイルカーブが出来上がります。

ここで覚えておきたい事は以下2つです。
①CALLもPUTも行使価格が同じであればインプライドボラティリティ(IV)は同じということ
→もしこの数字が異なっていれば、そこに裁定(アービトラージ)機会が生じます。本件については後日noteで解説いたしますね。
②各行使期日のIVを並べると、実勢相場近辺(ATM=at the money)が最も低く(8000ドル近辺が69.12%)、上下に遠ざかれば遠ざかるほど(OTM=out of the money)高くなります(4000ドルだと77.54%、20000ドルだと91.97%)。
→これらを全て結ぶと、人が笑っている口元のような形となります(⇦スマイルカーブと言われる所以です。尚、人が怒っているようなアングリーカーブになることは基本的にありません)
スマイルカーブのイメージは下記の通りです。

繰り返しとなりますが、IVの構造は、実勢相場近辺(ATM=at the money)が最も低く、実勢相場から離れれば離れるほど高くなります(OTM=out of the money)。
確率論の原則で見れば、どの行使価格にあっても権利行使される確率は同じ(=スマイルカーブが横一直線の真一文字)となるべきですが、現実世界では、各行使価格毎のIVが同一になることは殆どありません。
横一直線のIVで計算したオプション価格をTV(theoretical Value=理論値)と言います。例えば、実勢相場が7500ドル、7500ドルオプション(ATM)のIVが70%、9000ドルオプションのIVが80%とした時、9000ドルオプションの価格をATMの70%で計算した際に出てくる値をTV、実勢の80%で計算した際に出てくる値を市場価格と言います。オプションディーラーはオプション価格を計算する際、市場価格とTVを見比べる癖が付いております。
つまり、スマイルカーブは、実際に市場で取引されている価格と、TV(理論値)の差を表していると説明することもできるでしょう。
ではなぜこのような現象(スマイルカーブ)が起きるのでしょうか?
スマイルカーブが生じる3つの理由
スマイルカーブが生じる理由(両端のボラティリティが高くなり、且つ左右に傾きが生じる理由)は主に下記3つがあります。
①オプションの売り手は、プレミアムの大きなATM近辺のオプションの売りを好み、プレミアム実額の小さなOTMオプションの売りは好まないこと。⇦オプションのMM(マーケットメイカー)の習性
②オプションの買い手は、宝くじ的発想でプレミアム実額の小さなOTMオプションの買いを好み、セータ負担が大きなATM近辺の買いは好まないこと。⇦オプションのMT(マーケットテイカー)の習性
→上記①と②が、ATMに対してOTMが高い構造を生む主な理由となります(これがバタフライ)。尚、市場が潜在的な不安(すぐに顕在化しないが、顕在化したらとんでもない事が起きるような地合い)を抱えている際に、バタフライは上昇しがちです(ATMに対してOTMオプションが一段と高くなる状態)。恐怖指数と言われるVIXはオプションのATMに性質が近く、skew指数がバタフライの性質に近い感じがします(このあたりは少しややこしいので、Twitterなどで別の機会にご説明いたします)。
③オプションスキームにone-wayのフローがあること。また市場参加者は相場の過熱感に呑み込まれる習性があること。
→上記③の前者は、マイニングファームによる輸出レンジフォワード(OTMのBTCコール売り、OTMのBTCプット買い)の取り組み等、実需フローに基づいたオプション取引の存在が挙げられます(マイニングファームによる輸出レンジフォワードが増えれば増えるほど、OTMのプットのインプライドボラティリティは、OTMのコールのインプライドボラティリティより高くなります。つまり左右に傾きが生じます(これがリスクリバーサル)。
→また、上記③の後者については、相場が過熱している際に、市場参加者が同一方向にポジションを取ってしまう習性があること(BTC相場が急落している際にBTCプットを売る人は殆どおらず、BTCプットを買う人が集中するなど)。
まとめ
以上の通り、スマイルカーブを見るだけで、市場が抱える構造を何となくイメージすることが可能となります。今後、オプションスキームを用いる実需が増えるに連れてその重要度は増すと考えられます(例えば、金融機関や仮想通貨交換業者がデリバ内包預金などを開始すれば、需給的にプット売りが生まれる為、スマイルカーブの左端が沈んだり、或いは、レバレッジ型スキームが増加すれば、MMによるATM近辺のベガ売りが活発化するので、ATM付近がOTMに比べて沈み易い歪なカーブとなったり)。
スマイルカーブは市場参加者のミスプライスを狙うことでアービトラージのチャンスが生まれるだけでなく、市場が抱える構造そのものを理解する際にも役立ちます。TwitterやDaily reportを通じて都度スマイルカーブについて言及していきますので、今後とも何卒宜しくお願い致します。