Mastercard、Visa、e-Bay、 StripeらがLibraプロジェクトからの撤退を表明
フェイスブックという巨大IT企業が既存金融システムに大きな転換期をもたらそうとしているLibra(リブラ )プロジェクトですが、2019年10月14日(月)に各企業によるプロジェクトへの参加表明を控える中、Paypalに続き、決済業者のMastercard、Visa、Stripe、Mercado Pago、並びに大手通販サイトのe-Bay(合計5社)が金曜日時点で参加見送りを決定しました。
リブラプロジェクトに対しては、ホワイトペーパー公開当初より、各国の金融当局や政治家などから相次ぎ牽制の声が上がっていましたが、Paypalの撤退表明直後の2019年10月8日に、参加検討段階であったMastercard、Visa、Stripeの3社宛に、米国の上院銀行議会の議員であるBrian Schatz氏及びSherrod Brown氏の2名は連名で書簡(原文)を送付しました。
その内容は、同社らがリブラプロジェクトに関与する場合、Libraの送金活動のみならず、既存の送金活動についても当局の監視(精査)が強まるとの警告で、参加を見送るよう圧力を強めるものでした。
これ以外にも、各国の政界や金融当局から相当に継続的な圧力を受けたものと想像します。様々な影響に配慮し同5社は今回見送る方針を固めたと見られます。
Visaの広報コメント
Visaの広報担当者は『今回の見送りの一件について、当局の要求への対応を含むリブラ 協会の今後の動向をしっかり精査した上で最終的な判断を下す予定であるが、規制の下で、ブロックチェーンを活用した安全な送金システムの確立は、特にエマージング市場などにおいて、顧客の利便性向上に繋がると信じている』とコメントし、同プロジェクトへの参加検討を今後も継続していくことを示唆しました。
リブラの今後、当局対応が求められる
政府・当局らの懸念
上院議員らが送付した同書簡では、ユーザー数を多く抱えるフェイスブックが主導するプロジェクに対し、①犯罪・テロ集団への資金供与(マネーロンダリング)、②既存金融システムの不安定化、③金融政策への干渉、④プロ投資家に限定されている高リスク商品の一般投資家の流入など多くの問題を指摘しています。リブラはプロジェクト参加者に重大なリスクを説明しないまま、参加を促しているのではないかと懸念の声も上げました。
さらに、フェイスブック自身も個人情報漏洩をはじめとした複雑な問題を抱えていることを指摘。リスクマネジメントが十分出来ていない現況にも触れ、例えば昨年報告された児童性的虐待に関しては、1840万件中1200万件(全体の約65%)もの児童性的虐待写真やビデオがFacebook Messengerを介してやり取りされているが、リブラの実現によりMessenger上で暗号化されたメッセージに金銭価値の移動まで埋め込まれるネット社会が創り上げられてしまったらどんなに恐ろしいかと強い警戒感が示されました。
(ちなみにこの件については、公聴会でも指摘され、ザッカーバーグCEOは、フェイスブックには犯罪をトレースすることができたからこそ、これだけの報告件数になっているのであって、そもそも母数に含まれないものが万とありより危険だと反論する回答している場面がありました)
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リブラの今後、求められる当局対応
リブラ構想は、ユーザーの利便性を向上させる可能性がある一方で、犯罪に悪用されるリスクがあります。想定されるユーザー数の規模から、リブラは当局らの要求に真摯に応えなければ、プロジェクトの前進は厳しいものと考えられます。
しかし、GAFAほどの大企業とは言え、全ての責任の所在が一企業のみにあると責め立て、対処を負担させることはできないものと考えます。リブラプロジェクトの出現により、ユーザーの利便性向上に向けて、当局らも重い腰を上げてリブラが抱える問題を一緒に考えていかなければなりません。
リブラプロジェクトには、引き続き多数の参加企業が見込まれています。月曜日に判明する正式参加者らの面々や、延期されるとの見立ても多い「2020年ローンチ」の実現に向けた今後の動向に世界中が注目しています!