G20はリブラなどステーブルコイン全般に対する規制強化を議論

G20、リブラ・ステーブルコインの規制も焦点に

2019年10月17日-18日に米ワシントンD.C. で開催された主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)が閉幕しました。今年の議長国である日本からは麻生太郎財務相と黒田東彦日銀総裁が出席しています。

そして今回、G20として初めて、暗号資産(Libra/リブラ)について議論がなされました。

暗号資産(特に世界に広く普及する可能性のあるグローバル・ステーブルコイン)に対して最も懸念されているのがアンチマネーロンダリング対策ですが、これに関しては各国足並みを揃えなければ防ぐことができません。今回の会合では、広く流通する可能性のあるLibraに関して、懸念事項が払拭できるまで当面発行は認めないとの方針で各国意見が一致しました。

金融技術の革新による潜在的な便益を認識しつつも、グローバル・ステーブルコイン及び類似の取組みが金融政策及び規制上の一連の深刻なリスクを生じさせることになる
との認識が各国間で共有された格好です。

金融安定理事会FSBの報告書

今回のG20に向けて、主要各国の金融当局で構成される金融安定理事会(FSB)は、金融規制改革の進捗や今後の課題にかかるレターを事前に発出しました。

同レターでは、グローバル・ステーブルコインが、クロスボーダー取引や送金に非常に有効な手段(特にエマージング市場で)になり得るものの、既存の法規制がステーブルコインに適用できるか、イノベーションと法規制のギャップがある場合、どう穴埋めするか精査していること、そして2020年4月に協議報告書、2020年7月に最終報告書をまとめる予定であることが明記されております。

FSBはレター内で金融システムのレジリエンス(回復力)を繰り返し強調しており、イノベーションの芽を摘まず、しかしFintechの発展とともに生まれる新たなリスクを回避できる金融システムの確保に向けて法規制の整備を行っていると報告しています。

G20閉幕後のプレスリリース

グローバル・ステーブルコインに関するG20のプレスリリースは以下の通りです。

G20プレスリリース(参考訳)
  1.  我々は、規制基準設定機関が現在行っている金融技術革新から生じている、及び生じつつあるリスクに係る対応準備を支持するとともに、大阪サミット首脳宣言を受けて金融安定理事会(FSB)および金融活動作業部会(FATF)から提出された、グローバル・ステーブルコインに関する報告を支持する。
  2.  我々は、2020年におけるFSBおよびFATFの更なる報告を待つ。また、IMFに対して、加盟国の通貨主権に係る問題を含むマクロ経済への影響について、各国の特徴を踏まえて、検証を継続していくことを要請する。
  3.  我々は、金融技術革新による潜在的な便益を認識しつつもグローバル・ステーブルコイン及びその他のシステム上大きな影響を与えうる類似の取組が政策及び規制上の一連の深刻なリスクを生じさせることになるということに同意する。そのようなリスクは、特に、マネーロンダリング、不正な金融、消費者・投資家保護に関するものを含め、こうしたプロジェクトのサービス開始前に吟味され、適切に対処される必要がある。

G7もステーブルコインに関する報告書を発表

G20と同時に、主要7カ国(G7)のワーキンググループであるCPMI(Committie on Payments and Market Infrastructures )は10月18日にステーブルコインに関する報告書を公表しました。
同ワーキンググループの議長兼欧州中央銀行(ECB)のクーレ理事は報告書発表直前のインタビューで、次のように述べています。

欧州において、委員会もECBもステーブルコインを一切排除するというつもりはない。しかし、支払いの技術的進化により金融規制・アンチマネーロンダリング・テロ資金供与問題・プライバシー・ソーシャルネットワークで生産されたデータと送金データの区別・グローバル企業の税金などの多面的な課題が存在する。
人々のお金において、技術革新と安全性にトレードオフ(二律背反)があってはならず、ステーブルコインは最高度の規制基準(今後新たに設定されるものも含む)を満たし、より広範な公共政策目標を遵守しなければならない。

非常に高い規制基準になるが、これを充足できるか否か(つまりはステーブルコインが認められるかどうか)を判断するにはまだ時期尚早である。

出所:Bloombergの原文より抜粋、CoinCollege∛参考訳

ペイメントの変革は国内でも世界的にもここ5年で急速に進んだ。これは20年前のTARGET以来のことである。今回は個人間の送金で、テクノロジーから改革の波が訪れた。いかなる規制を通す時も、送金費用の低減及び送金速度の改善をもたらすイノーべションが、”良いこと”であることを起点に検討しなければならない

個人的見解として、中央銀行デジタル通貨(CBDC)はいずれ必ず誕生すると考えている。それがどのような形式で、いつ、どの管轄から誕生するのかはわからない。しかし我々は、テクノロジーによる利益を享受できるように、順応する必要がある。

フィンテック分野における規制整備は、サンドボックスアプローチと呼ばれる、最初から全て規制するのではなく、限定的な運用の元に実証実験を行いながら、緩やかに規制を適用する方法が取られきた。しかしマンモスプロジェクトのリブラについてはこのようなアプローチが取れない。このため、グローバルスケールに達する暗号資産に対しては既存の銀行業務に準じた規制が敷かれるだろう

2020年末のローンチを目指すフェイスブックが率いるリブラプロジェクトに対し、懸念の声が大きく報道されていますが、ローンチの見通しが不透明であっても、フェイスブックという巨大IT企業が送金分野(暗号資産分野)で動き出したことで、各国の金融当局はより早急により無視できないレベルで、ステーブルコインに関する規制整備を検討し始めるきっかけになったのは間違いありません。

また、グローバル・ステーブルコインがもたらす利便性については認められている部分も多く、個人送金・支払いシステムの発展は規制整備を待つのみと言えるのかもしれません。

タイトルとURLをコピーしました