国内では暗号資産交換業者の登録が進み現在合計22社にものぼりますが、策定中の内閣府令案は、暗号資産交換所に対し、証券会社と同水準の厳格な自己資本規制を課す見通しであることが某有料日系メディア(2019年12月23日)で報じられました。
暗号資産デリバティブ取引、自己資本規制適用か
報道によると、検討中の自己資本規制は、市場リスク(リスク・ウェイト100%)、取引先リスク(25%)、基礎的リスク(100%)のようです。
デリバティブ取引が増えるほど資本負荷が増える「市場リスク」の算定は、標準的方式の他、内部管理モデル方式での計算も認められる方向とのことです。
また、コールドウォレットで管理していない場合、ハッキング・流出時の再調達コスト見合いとして100%を基礎的リスク相当として加算する必要があり、リスク・ウェイトは最大225%(上記合計)となるようです。
このリスク・ウェイトは、(あくまでイメージですが)例えばリスク・ウェイトが厳格に規定されていることで知られる証券化商品と比較した場合、最優先トランシェ・残存期間5年以上の証券化商品の「BB-格付」に匹敵するリスク・ウェイトの高さです。
既存金融において「市場リスク」の算定は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)のバーゼル規制における「マーケット・リスク」に準拠している部分が多いのですが、バーゼル委員も暗号資産取引に対し、自己資本規制の検討を行っており、日本の規制がグルーバルの基準となる可能性もあります。
認可を受けた暗号資産交換所が増える中、暗号資産デリバティブ取引で差別化を検討している企業もあると考えますが、改正金商法により既存金融機関との競争に晒されるうえ、高いリスク・ウェイトが検討されているのでは、収益面で厳しい戦いが強いられそうです。

<金商法第46条の6抜粋>
1 金融商品取引業者は、資本金、準備金その他の内閣府令で定めるものの額の合計額から固定資産その他の内閣府令で定めるものの額の合計額を控除した額の、保有する有価証券の価格の変動その他の理由により発生し得る危険に対応する額として内閣府令で定めるものの合計額に対する比率(以下「自己資本規制比率」という。)を算出し、毎月末及び内閣府令で定める場合に、内閣総理大臣に届け出なければならない。
2 金融商品取引業者は、自己資本規制比率が百二十パーセントを下回ることのないようにしなければならない。
3 金融商品取引業者は、四半期(事業年度の期間を三月ごとに区分した各期間(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度にあつては、内閣府令で定める各期間)をいう。第五十七条の二第五項並びに第五十七条の五第二項及び第三項において同じ。)の末日における自己資本規制比率を記載した書面を作成し、当該末日から一月を経過した日から三月間、全ての営業所又は事務所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。
※既存の証券会社は、金融商品取引法(金商法)第46条の6第2項により、金融商品取引業者は自己資本規制比率が120%を下回らないようにする必要があります(140%を下回ると報告義務発生)。