ブロックチェーンを用いた「デジタル証券化」の波が日本にも押し寄せてきており、2020年はまさに「セキュリティトークン元年」になるとも言われています。
この記事では、足元注目を浴びつつある「セキュリティトークン」を推進する3つの業界団体の内、SBIグループが主導し、本邦主要証券会社らが参画する「日本STO協会」について解説いたします。
その他2つの業界団体についての記事はこちら
・一般社団法人日本セキュリティトークン協会
・ST研究コンソーシアム
一般社団法人日本STO協会とは

一般社団法人日本STO協会(JSTOA)は、2019年10月に発足し、「自主規制業務等を通じて、電子記録移転権利等(いわゆるセキュリティートークン)の取引を公正・円滑にし、不公正取引やマネロンなどの違法行為を防止し、投資者の保護と金融商品取引業の健全な発展を目指すこと、
並びに、電子記録移転権利等のビジネス機会を模索・実現し、普及啓発に努め、金融資本市場の活性化・高度な産業の育成・グローバルな視点での競争力の維持を推進すること」を目的に掲げる非営利団体となります。
本団体は、2020年4月30日付で、金融商品取引法第78条第1項に規定する「認定金融商品取引業協会」として、金融庁より認定を受けており、2020年5月1日から定款に定める電子記録移転権利等の売買その他の取引等に係る自主規制業務等を実施しています。
定款諸規則は2020年4月20日に公表されております。
セキュリティトークンを推進する3つの団体
日本では、セキュリティトークン(ST)ビジネスを牽引する業界団体として、①ST研究コンソーシアム、②日本STO協会、③日本セキュリティトークン協会の3つが存在します。

上記の内、①はMUFGグループがサービス提供をあたり、他社の知見を集約するために設立された団体です。
③については、会員の業態が多岐に渡ることから、よりビジネスサイドの中立的な業界団体(強いて言うならば、やや不動産色が強い)とみられます。
こうした中、②の日本STO協会については本邦主要証券会社9社が加盟し、金融庁より自主規制団体として認定されるなど、「金融・証券色(+SBIグループ色)」が強い自主規制団体です。
日本STO協会の目的
本協会は、金融庁より、金融商品取引法第78条第1項の規定に基づき、「認定金融商品取引業協会」として認定を受けた自主規制機関です。
自主規制業務等を通じて、電子記録移転権利をはじめとするセキュリティトークンの取引を公正・円滑にならしめ、「投資者の保護・金融商品取引業の健全な業界の発展」を目指すとともに、「金融・資本市場機能の活性化・高度な産業の育成・グローバルな視点での競争力の維持」を推進し、セキュリティトークンの広報、普及啓発に努めます。
出所:日本STO協会ウェブサイト
日本STO協会の事業概要
⑴ 正会員及び金融商品仲介業者が業務を行うにあたり、金商法その他法令の規定を遵守させるための正会員及び金融商品仲介業者に対する指導、勧告その他の業務を行うこと。
出所:日本STO協会ウェブサイト
⑵ 正会員及び金融商品仲介業者の行う電子記録移転権利等の売買その他の取引等に関し、契約の内容の適正化、その他投資者の保護を図るため必要な調査、指導、勧告その他の業務を行うこと。
⑶ 正会員及び金融商品仲介業者による詐欺行為、又は不当な利得行為を防止し、投資者の信頼を確保すること。
⑷ 正会員及び金融商品仲介業者の電子記録移転権利等の売買その他の取引等に関する公正な慣習を促進して取引の信義則を助長すること。
⑸ 正会員及び金融商品仲介業者の法令、法令に基づく行政官庁の処分若しくは定款その他の規則又は取引の信義則の遵守の状況並びに正会員の営業及び財産の状況を調査すること。
⑹ 正会員及び金融商品仲介業者の業務に対する投資者からの苦情の解決及び電子記録移転権利等の売買その他の取引等に関する正会員及び金融商品仲介業者と投資者の間の紛争の解決のあっせんを行うこと。
⑺ 正会員及び金融商品仲介業者の行う電子記録移転権利等の売買その他の取引等の適正化に必要な業務のため必要な規則を制定し、当該正会員及び金融商品仲介業者の社内規則及び管理体制を整備させること。
⑻ 金商法第64条の7第1項の規定(同法第66条の25において準用する場合を含む。)に基づき、金融庁長官から委任された外務員の登録に関する事務を行うこと。
⑼ 正会員及び金融商品仲介業者の役員及び従業員の試験、研修等を行い、その資質の向上を図ること。
⑽ 電子記録移転有価証券表示権利等及びこれらに付随する技術に関する調査研究、情報の収集又は提供並びに広報を行うこと。
⑾ 会員間の意思の疎通及び意見の調整を図ること。
⑿ 金融商品取引業に関係のある団体等との意思の疎通及び意見の調整を図ること。
⒀ 正会員の反社会的勢力排除の取組みに関して支援すること。
⒁ 前各号に掲げるもののほか、本協会の目的達成に必要な業務を行うこと。
日本STO協会の正会員(計9社)
正会員 |
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株式会社SBI証券 |
楽天証券株式会社 |
auカブコム証券株式会社 |
マネックス証券株式会社 |
大和証券株式会社 |
野村證券株式会社 |
みずほ証券株式会社 |
SMBC日興証券株式会社 |
東海東京証券株式会社 |
三井住友信託銀行株式会社 |
三菱UFJ信託銀行株式会社 |
日本STO協会の運営メンバー
役員 | 氏名 | 所属・役職 |
---|---|---|
会長 | 北尾 吉孝 | 株式会社SBI証券 代表取締役会長 |
副会長 | 楠 雄治 | 楽天証券株式会社 代表取締役社長 |
副会長 | 齋藤 正勝 | auカブコム証券株式会社 代表取締役社長 |
理事 | 板屋 篤 | 大和証券株式会社 執行役員(人事副担当 兼 企画副担当) |
理事 | 木原 正裕 | みずほ証券株式会社 常務執行役員 |
理事 | 清明 祐子 | マネックス証券株式会社 代表取締役社長 |
理事 | 野津 和博 | SMBC日興証券株式会社 取締役兼専務執行役員 |
理事 | 伴 雄司 | 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社常務執行役員 |
理事 | 八木 忠三郎 | 野村ホールディングス株式会社 執行役員(未来共創カンパニー副担当兼イノベーション推進担当) |
理事 | 佐藤 太郎 | TARO Ventures代表(元 一般社団法人日本セキュリティトークン事業者協会 代表理事) |
監事 | 斎藤 創 | 創・佐藤法律事務所 代表弁護士 |
電子記録移転権利等の発行市場を担う基幹システムのガイドライン
日本 STO協会は、電子記録移転権利の発行等を行うシステム(STOプラットフォーム)について、具備されるべき機能・遵守すべき事項等を示すガイドラインの検討を行うワーキンググループ(「WG」)を2020年1月に発足しています。
WGには、正会員以外の金融機関・弁護士・ブロックチェーン関連会社なども参画しており、電子記録移転権利による資金調達手段の多様化、取引の活性化に向け、垣根を超えたニーズの共有と意見交換等が行われているようです。
1月下旬から2月下旬にかけて行われた4回にわたる会議を経て、「電子記録移転権利等の発行市場を担う基幹システムのガイドライン」が取りまとめられ、4月23日付で公表されました。
ガイドラインは、(1)「次世代金融資本市場の創出と発展」(2)「安全な取引の確保」(3)「技術革新への柔軟な対応」を原則に、基幹システムに具備されるべき基本的機能や重要な要素を提示しています。
まとめ
日本STO協会は、他の2つの協会団体と比べて、証券会社色(+SBIグループ色)が強いと言えます。金融庁による認定も2020年4月30日付けで取得しました。
このため、1973年に設立され、金融庁から認可を受けた(金融商品取引法(第67条の2第2項))証券業界の自主規制機関である「日本証券業協会」(日証協)が、「有価証券の売買その他の取引等を公正かつ円滑ならしめ、金融商品取引業の健全な発展を図り、もって投資者の保護に資すること」を目的に現在も様々な活動を行っているように、
日本STO協会も、有価証券取引の新たな形態である「STO」の発展と投資家保護を目指し、活動を行っていくものと予想されます。