日本STO協会が自主規制ルールを公表
SBIホールディングスの北尾社長が主導し2019年10月1日付で設立された、本邦主要証券会社ら9社が加盟する一般社団法人日本STO協会は、認定金融商品取引業協会として金融庁の認定を受けるにあたって、2020年4月20日付で、定款、業務規程及び自主規制規則等を公表しました。
定款・自主規制ルールの一覧

日本STO協会は、金商法に従い、以下項目に関する定款・自主規制規則を公表しました。
- 定款
- 定款の施行に関する規則
(別表) 定款の施行に関する規則第11条に基づく報告事項 - 業務規程
- 電子記録移転権利等の取引等に関する規則
- 電子記録移転権利の募集の取扱い等に関する規則
- 反社会的勢力との関係遮断に関する規則
- 外務員の資格、登録等に関する規則
- 内部管理統括責任者等に関する規則
- 顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則
- 苦情及び紛争の解決のための業務委託等に関する規則
- 監査規則
- 処分等に関する規則
- 規律委員会規則
- 入会金及び会費に関する規則
このうち、注目したいのは 「電子記録移転権利の募集の取扱い等に関する規則」と、「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」です。
電子記録移転権利の募集の取扱い等に関する規則
本規則では、電子記録移転権利の募集等の取扱い等又は引受け(いわゆるSTO)を行う場合の、厳正な審査項目が明記されています。
STO(セキュリティー・トークン・オファリング)の原点であるICO(イニシャル・コイン・オファリング/暗号資産のIPO)は、世間に広く詐欺的な印象を与えてしまいました。
しかし、ブロックチェーンを活用した資金調達手段は新たなビジネス機会にもつながります。どのように投資家保護を図りつつ資金調達手段として確立するかが課題となっていました。
今般、発行者に対する金融機関の具体的な審査項目が明確化されたことで、金融商品としてのSTO発行の土台づくりができたことになります。
⑴ 発行者及びその行う事業の実在性
出所:一般社団法人日本STO協会の定款・諸規則の「電子記録移転権利の募集の取扱い等に関する規則」より
⑵ 発行者の財務状況
⑶ 発行者の事業計画の妥当性
⑷ 発行者の法令遵守状況を含めた社会性
⑸ 反社会的勢力への該当性、反社会的勢力との関係の有無及び反社会的勢力との関係排除への 仕組みとその運用状況
⑹ 当該正会員と発行者との利害関係の状況(当該正会員が当該電子記録移転権利の発行者であ る場合を除く。)
⑺ 当該電子記録移転権利に投資するに当たってのリスク
⑻ 調達する資金の使途
⑼ 当該電子記録移転権利の保有又は移転の方法その他当該電子記録移転権利の仕組みに関する リスク
⑽ その他正会員が必要と認める事項
顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則
本規則では、①1年に1回以上の監査の実施や、②自己資本比率が一定基準を下回った場合の報告や措置などについて定めており、正会員の統率を図っています。
正会員は、金商法第43条の2第3項の規定に基づき、同条第1項及び第2項の規定による顧客資産の分別管理の状況について、毎年1回以上定期的に、以下の事項を記載した顧客資産の分別管理に係る法令遵守に関する経営者報告書を作成し、日本公認会計士協会「業種別委員会実務指針第54号『金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針』」に定めるところにより、公認会計士又は監査法人(以下「公認会計士等」という。)による分別管理の法令遵守に関する保証業務に係る分別管理
一般社団法人日本STO協会の定款・諸規則の「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」より
監査(以下「分別管理監査」という。)を受けなければならない。
本協会は、正会員が次の各号のいずれかの場合に該当し、かつ、本協会が公益又は投資者保護のため必要かつ適当と判断したときは、その必要の限度において、当該正会員に対し、当該各号に定める措置その他必要な措置を講ずるものとする。
⑴ 自己資本規制比率が120%を下回った場合分別管理に関する状況等の報告を求めること。
⑵ 自己資本規制比率が100%を下回った場合顧客分別金の必要額の差替えの実施その他の顧客資産の分別管理の確実な実施のために必要な措置をとるよう勧告すること。
⑶ 業務又は財産の状況に照らし支払不能に陥るおそれがある場合分別管理に関し、監査規則第4条第2号に規定する特別監査を実施すること。
日本STO協会の会員となる要件
認定金融商品取引業協会の正会員は金商法上、「金融商品取引業者」に限定されていることから、日本STO協会の正会員には、暗号資産取引所が登録を受ける「暗号資産交換業者」は(暗号資産交換業者のうち、金融商品取引業者とのして登録を受けている者はこの限りではありません)加盟できないものと見られます。
また、現在の正会員メンバーが証券会社で構成されていることから、「日本証券業協会」(日証協)の暗号資産業界版とも言えます。
(1) 日本STO協会の正会員要件
第一種金融商品取引業者又は第一種少額電子募集取扱業者、第二種金融商品取引業者又は第二種少額電子募集取扱業者及び登録金融機関(次号において「第一種金融商品取引業者等」と いう。)のうち、電子記録移転権利等の売買その他の取引等に係る業務を行う者
(1) 日証協の正会員要件
第一種金融商品取引業(店頭金融先物取引等及び第3条第7号ニに掲げる取引又はその媒介、取次ぎ若しくは代理に係る業務を除く。以下この条において
同じ。)を行う者(次号イからハまでに掲げる業務のみを行う者を除く。)
日本STO協会の正会員の要件には、少額電子募集取扱業者と呼ばれる、いわゆるクラウドファンディング業者なども含まれるようです。
なお、それぞれの団体は正会員以外の会員も存在します。日本STO協会の場合、正会員の他に(2)賛助会員と(3)後援会員があります。
日本STO協会の入会金
正会員の入会金:100万円
会員種別変更負担金:100万円
会員の1事業年度(4月1日から翌年3月31日までをいう。以下同じ。)の会費:
⑴ 正会員 300万円 ⑵ 賛助会員 50万円 ⑶ 後援会員 20万円