三菱UFJ信託銀行がセキュリティトークンの決済業務に本腰。特許も出願

三菱UFJ信託銀行、セキュリティトークンの決済業務に本腰、特許も出願

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の連結子会社である三菱UFJ信託銀行株式会社(MUTB)は2019年11月7日、株式会社三菱UFJ銀行及び三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社と共に、ブロックチェーン技術を活用した証券決済及び資金決済の一元的な自動執行を可能にする“Progmat(プログマ)”と称されたプラットフォームの提供を目指し、協力企業21社らと6日付で「ST(Security Token)研究コンソーシアム」(SRC)を設立したことを公表しました。

さらにProgmatの根幹技術については、日本国内で特許を出願したことも同時に発表しました。

2017年より始動していたカストディ(ウォレット開発)プロジェクト

三菱UFJ信託のカストディプロジェクト

2017年12月の時点でMUTBは既に、暗号資産交換所が破綻等した場合に顧客の暗号資産を保全する仕組みとして、暗号資産を顧客(委託者)の財産と分別管理する世界初の手法を開発し、特許を出願していたことが日経新聞で報じられていました。

銀行業務と信託業務を兼営するやや保守的なイメージのある信託銀行が、早期より暗号資産関連業務に乗り出していることが判明したことは重大なヘッドラインでした。

当時は、金融庁と折衝中で暗号資産が『信託の対象となる財産の一種』として認めれば、2018年4月にもサービス提供が開始される予定でした。

信託銀行とは

信託銀行は、顧客の資産管理・処分を主たる業務としており、顧客の信頼確保が大前提にあります。信託法では、①善管注意義務、②忠実義務、③分別管理義務、④公平義務、⑤報告義務などに関して厳しい規制を敷しており、銀行業務と信託業務を兼営する信託銀行は金融機関でも特に保守的な運用を行う機関に位置付けられます。

MUTBの置かれている環境

2018年4月、長年グループ間で重複していた営業体制の一本化を図るため、MUTBは収益の中枢であった法人貸出等業務を三菱UFJ銀行に移管することとなりました。

この副作用により、取引先数2600社・残高12兆円ほどがMUTBのバランスシートの資産サイドから抜け落ちることなってしまいました。
(某経済雑誌では今回の事業再編で年間約500億円の業務粗利益が剥落と報じています。)

収益改善に向けて、MUTBは新たな柱となるビジネスモデルの構築と業務効率化が喫緊の課題であったとものと見られ、これがいち早くブロックチェーンと信託の融合を推進する原動力になっていたのかもしれません。

ローンチ予定だった2018年以降の動向

しかし2018年当時は、年初1月に発生した約580億円に上るNEMの流出問題に端を発して、暗号資産交換所に業務改善命令が出されるなど金融庁も対応に追われ、MUTBのサービス提供は予定通りとはなりませんでした。

その間にも海外では、同じくカストディサービスとして注目を集めていたBAKKTのローンチが先行しました。

プロジェクトに関するアップデートがないまま、2019年11月に金融庁から投資信託に仮想通貨(暗号資産)を組み入れることを禁止する」との方針が示され、同プロジェクトへの影響も心配されました。

今回、2年ぶりにMUTBプロジェクトの進捗を確認できた格好です!

Progmat及びSRCの概要

Progmat(プログマ)とは

Progmatは、①財産管理機能(委託者の資産管理・処分)、②転換機能(資産を受益権に転換)、③倒産隔離機能(信託の固有財産から独立)(総称して「信託機能」)を有し、“器”として様々な金融商品の仕組みを支えるシステムとなっています。

当該信託機能を土台に、カストディするトークンベースの有価証券(社債・証券化商品など)の流通を、グループ証券会社である三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券と三菱UFJ銀行と協働してホールセール向け販売・管理を行うプロジェクトとなっています。

具体的な役割分担として、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券は法人向けを中心としたネットワーク参画の媒介者(所謂、金融商品販売の勧誘)、三菱 UFJ 銀行は将来的な商品組成の検討(ブレイン)を担うようです。

SRC(セキュリティトークン研究コンソーシアム)とは

コンソーシアムは、①資金調達・投資検討者、②アレンジ・媒介検討者、③技術協力・決済検討者で構成されており、金融商品の組成から販売、購入先まで一気通貫に網羅されていることが特徴です。

出典:Progmatのコンセプトペーパー

暗号資産のカストディ業務が法規制上の制約受けるため、プロジェクトのローンチがいつになるのか引き続き不透明な状況ですが、2年ぶりにプロジェクトの進展が公表されたことで依然前向きな姿勢が確認できたと言えます。

STO業界については以下の関連記事でも考察しております。

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ワイン丸

外資系金融機関のファンドマネジャー・バイサイドリサーチ出身。社債投資・株式投資・為替運用・不動産投資・証券化商品投資を経験。英語・中国語・日本語のトリリンガル。海外情報担当。

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