価格高騰劇の裏、中国習近平国家主席と米議会公聴会の温度差

価格高騰劇の裏、中国習近平国家主席と米議会公聴会の温度差

2019年10月26日のビットコイン(対ドル)相場は24時間で39%近くも高騰し、約1ヶ月ぶりに1万ドルの大台を回復して市場を賑わせました。

きっかけは中国の習近平国家主席によるブロックチェーン技術の開発を後押しする発言だったと見られています。また同日、中国の第13回全国人民代表大会の常務委員会で『暗号法』が可決された模様で、チャイナマネーの流入に期待した一部投機筋による買い攻勢が入ったものと考察しています。

しかし、ブロックチェーンで世界をリードする中国の姿勢は兼ねてより一貫しており、今回の習近平国家主席の発言は特段新しい材料ではありませんでした。
中国政府はIT人材の育成に力を入れ、2016年時点で既にブロックチェーン関連のスタートアップ企業数は米国を上回ります

今回の価格急反発は、習近平国家主席の発言のタイミング=米フェイスブックのザッカーバーグCEOの米議会公聴会の直後だったことが大きなポイントだったものと推察します。

フェイスブックが主導する暗号資産Libra(リブラ)プロジェクトは、先般の米議会公聴会で集中砲火を浴びせられました。その3日後に今回の発言があったことで、ブロックチェーン技術の推進と同技術と最も親和性がある暗号資産の発展において、中国と米国に温度差があることが印象づけられ、中国(チャイナマネー)への大きな期待感が、急反発を率いたものと考えられます。

米国、金融リーダーで在り続けられるか?!

公聴会の様子

2019年10月23日、世界を牽引する巨大IT企業の米フェイスブックを率いるマーク・ザッカーバーグCEOは、米議会下院金融サービス委員会による公聴会に出席しました。

50名以上の議員に対し、ザッカーバーグCEOたった1人で臨んだ公聴会の冒頭陳述で、ザッカーバーグCEOは次のことを述べています。

Libra(リブラ)の構想は、今日のメッセージが簡単に・安全に送信できているように送金システムを確立させ、人々に利便性をもたらすこと

金融安定化やテロリスト対策など課題は山積だが、我々がイノベーションをしないことのリスクも共有したい。
世界は今この瞬間にも発展を続けており、特に中国ではデジタル通貨を数ヶ月後にはローンチしようとしている(2019年9月6日の中国人民銀行(中銀)高官が公表)

Libraが成功するかどうかは分からない。しかし責任を持って新しいことにチャレンジすることが大切であり、チャレンジ精神がこれまで米国の発展に寄与してきたと認識している。これからもイノベーションを続けなければ、米国が今後も金融のグローバルリーダーであり続ける確証はない。

出所:公聴会での発言を元にCoinCollege∛の解釈・仮訳

しかしフェイスブックはLibra以外で、①個人情報流出問題、②偽アカウントとフェイクニュース問題、③差別的ターゲティング広告問題、④メッセンジャーを経由した児童性的虐待写真の流出問題、⑤ユーザーデータの利用を防止するための暗号化の推進と、暗号化した場合の政府機関による犯罪摘発の相反する問題など、多くの問題を抱えています(関連記事でもご紹介しています)。


これらの問題が解決されていないと認識している大多数の議員らは、“Facebook=Libra”として、同プロジェクトに嫌悪感を示したのでした。

公聴会では、そもそもフェイスブックに対し、あまりに巨大化したプラットフォームは、まるで一つの政権のようになりつつある。とても危険であり、解体を検討すべきだとの声も上がりました。

リブラついて、一部共和党保守派の議員からは、イノベーションの芽を摘もうとしていることにむしろ危機感を覚えると、プロジェクトを擁護する声もありましたが、大多数は、フェイスブック自身の問題も解決されないままに、マネーロンダリングや金融の不安定化を招きかねないプロジェクトを主導していることを非難しました。

また、低所得者の痛みを経験していない富裕層のザッカーバーグCEOが、銀行口座を持てない人たちのために”低コスト送金”を推進するのは、将来的にユーザーの送金情報から収入を得る”営利的企み”があるはずだと警鐘を鳴らす声もありました。

議員らは1人5分の持ち時間しかないこともありますが(それでも公聴会は通しで50*5=150分かかることになります)、ザッカーバーグCEOに反論の隙を与えず、”Yes or No”の二択を迫る場面が多くあり、非常に厳しいものとなりました。

米国は金融リーダーであり続けられるのか。

今後の調整の難しさが誰の目にも明らかでしたので、ザッカーバーグCEOは、『米当局から承認が得られるまで(サービス提供を行う各国含む)、リブラのサービスを開始しない』こと、そして、万が一承認が得られないまま、”独立機関”(=フェイスブックではない)たるリブラ協会がプロジェクトのローンチに踏み切ろうとするならば、『フェイスブックはリブラ協会に賛同できないため脱退することになるだろう』と配慮する発言をしました。

議員らの警鐘は正当なものだと言えます。しかしイノベーションに寛大である米国が、アメリカン・ドリームの象徴ともされる大手IT企業を相手取り、社会にとって諸悪の根源であるかのように批判したこと、そして中央集権型のLibraに対して非常に強い懸念を示したことで、ザッカーバーグCEOが冒頭陳述で述べた『米国が今後も金融のグローバルリーダーであり続ける確証はない』との危機感が一層響いたようにも感じます。

<関連記事> Libra(リブラ)ローンチまでの課題は下記関連記事をご参照ください。

まとめ

米国がリブラプロジェクトのローンチに否定的である様子は、暗号資産市場に先行き不透明感を与えました。ところがこの3日後に、中国習近平国家主席が、ブロックチェーン関連事業の推進に改めて言及したことで、暗号資産の価格は急反発しました。

フィンテック分野で底堅く発展を続ける中国が、米国に代わって暗号資産市場を牽引する。中国国内の規制強化で抑え込まれているチャイナマネーが再び流入増加するのではないか ー との期待感が広まり、一部投機筋の買いを引き寄せたものと見られます。

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暗号資産市場へのチャイナマネー流入経路について
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